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セミナー・フォーラム参加報告

ASPAC Annual Conference 2007

"Engineering and Disaster Management" 参加報告

国際活動委員会ASPAC分科会
ASPAC分科会長 前田 剛和
褐嚼ン技研インターナショナル
ASPAC分科会委員 渡津 永子
潟Iリエンタルコンサルタンツ

1.会議概要
 Technical Consultancy Development Programme for Asia and the Pacific (TCDPAP) と、FIDIC Member Associations in the Asia-Pacific Region (ASPAC)共催による、"Engineering and Disaster Management"をテーマとした地域大会(TCDPAP年次大会)が、パキスタンのラホール、Avari Hotelにおいて、2007年 3月20日から22日の日程で開催された。 アジア・環太平洋地域より、16カ国約350名が参加した。地元パキスタンから、パキスタン地震再建復興庁(ERRA)、National Engineering and Services Pakistan (NESPAK)からのエンジニア、関係者等が多数参加していた。 技術セッションテーマとしては以下の3つがあり、12名が発表した。

  • Adequacy of Engineering Design
  • Post Disaster Reconstruction
  • Social & Environmental Impact

400人近い参加者で熱気あふれる会場


2.開会式 (3月20日 9:30〜)
大会は厳かなコーランの朗唱で始まった。 今大会のホスト国であるパキスタン協会(ACEP)のChaudry 会長による開会のあいさつののち、2005年にパキスタンを襲った地震についてのドキュメンタリーフィルムが紹介された。 続いてFIDICのPadilla会長、ASPAC廣谷議長、TCDPAPのHaque会長、ERRAよりSaleem 議長が、開会の言葉として、大会への期待、防災におけるコンサルティング・エンジニアの役割の重要性などについて述べられた。


▲オープニングの様子         ▲廣谷会長
左からACEP会長、TCDPAP会長、ERRA議長
FIDIC会長、ASPAC議長

3.導入セッション (3月20日 11:30〜)
技術セッションに入る前のイントロとして以下の講演があった。 FIDIC会長は、今後アジア・アフリカ地域における人口増加、地球温暖化等が引き起こす災害に対して、コンサルティング・エンジニアの役割、それをサポートするFIDICの役割について述べられた。今後各国のコンサルティング・エンジニアは「自立」し、技術、サービスの「質」を高めて、社会に貢献する必要があること、そのためにFIDICとして技術支援を惜しまないこと、また各企業の技術が正当に評価されるようQBSを今後も推進していくことなどが述べられた。 続いて、近年、大災害に見舞われた日本、インドネシア、パキスタンにおける災害経験等に関する発表があった。 日本からは廣谷会長が、日本の防災システムについて、阪神・淡路大震災で明らかになった課題と、それらの改善に向けた近年の取組を紹介した。 インドネシアについては津波災害、パキスタンについては地震災害について、その被害状況と各国からの支援に基づく復興状況について紹介があった。 各国に共通していたのは、災害復興におけるソフト面・ハード面からの支援の必要性、災害に対する市民への教育、早期警告システムなど研究開発分野への支援などであった。 各講演者とも予定時間を超過したことに加え、質疑応答も非常に活発に行われ、時間が1時間あまりオーバーした。中には的外れな質問もあったが、FIDICに対する期待の高さが伺えた。

4.テクニカルセッション1 (3月20日 14:00〜)
"Adequacy of Engineering Design"をテーマに4名が発表した。 地盤等の設計に関するISO規格(ISO23469:2005)やパキスタン地震における被害と対策を地質面からさぐったもの、また地震の推測に必要な土壌パラメーターに関する研究などの発表がなされた。 なおこのセッションでは、日本工営鰍フ百瀬氏が日本の中越地震に関する紹介を行った。 セッション全体を通して、非常に学術的な発表が多かった反面、質問者からは「それがここパキスタンでの地震の復興にどんな役に立つんだ」「その技術をどう使えばいいんだ」という質問が相次いだ。


▲発表後、記念品を受け取られる百瀬氏

5.TCDPAP役員会  (3月20日 16:45〜)
今後もインド主導で、活動を継続・拡大していくことを確認した模様。

6.ASPAC会議 (3月21日 7:30〜)
インド、ネパール、パキスタン、韓国、バングラディッシュ、日本及びFIDICよりEnrico Vink事務局長を迎えての会議となった。会議冒頭で、FIDIC事務局長より、FIDICの地域組織であるASPACに対し、今後も各国の状況について情報交換を行う機会を設け、FIDICと連携して活動することや、問題点・課題についてはFIDICができる限りの支援を行うこと、などが述べられた。議題のASPACホームページについては、トップ画面の見え方や、FIDIC本体のホームページとのリンクについて意見があがった。今後、試用期間を設け、他のMAやFIDIC役員会の意見を収集する。FIDIC2007大会においては、ワークショップ1において、インドか中国がASPACメンバーの代表としてプレゼンを行うことが望ましい旨を確認した。今後FIDIC担当者に働きかけを行っていく。FIDICによる研修制度については、事務局長より、オンラインのトレーナー研修システムや、地域研修センターの設立、ADBと連携した研修などについて説明がなされた。地域におけるセミナーの開催等詳細についてはFIDIC本部に問い合わせることとした。またCBSが主体となっている現状において、低価格で契約したコンサルティング・エンジニア企業になんらかの評価制度が必要ではないかという提案については、FIDIC全体で発注者に対しQBSを強く求めていくことを確認した。


▲ASPAC会議の様子

7.テクニカルセッション2  (3月21日 9:00〜)
"Post Disaster Reconstruction"をテーマに4名が発表した。パキスタン地震の復興状況や韓国、インドにおける防災への取組などについて紹介があった。地域特性(地質状況、社会状況)を踏まえた設計・建築方法や資材の利用方法等について、提案がなされていた。

8.テクニカルセッション3 (3月21日 11:45〜)
"Post Disaster Reconstruction"をテーマに4名が発表した。パキスタン地震の復興状況や韓国、インドにおける防災への取組などについて紹介があった。地域特性(地質状況、社会状況)を踏まえた設計・建築方法や資材の利用方法等について、提案がなされていた。

9.閉会式 (3月21日 14:00〜)
"Social & Environmental Impact"をテーマに4名が発表した。 災害後の自然環境、社会環境への影響とその影響軽減の対策等について発表がなされた。 このセッションでは、CTIの山下氏が地球温暖化の影響と洪水の発生に関する講演を行った。地震に関する発表が続く中で、地球温暖化に関する発表は非常にめずらしく、この地域に対する影響などについて質問がなされていた。


▲山下氏の発表の様子

10.終わりに(全体を通じて)
FIDIC議長の閉会の言葉にも表れていたが、今回は発表内容の質の高さ、一般参加者の意識・関心の高さ(情報収集への意欲)、会場設備、レセプションの趣向など、非常に驚くことの連続であった。 またFIDIC、TCDPAP関係者に対しては、今後ASPACとして活動していくことを強く印象づけることができた。ASPAC、TCDPAP両組織については、活動目的や構成メンバーが重複することから、組織のあり方についてこれまでも議論されてきた。両組織の競合が懸念されるなか、今大会のように様々な活動を連携して行うことで、将来的な方向性を今後も探っていく必要がある。 なお、次年度のTCDPAP年次大会は、隣国韓国での開催予定であり、ASPACとしても協力して運営にあたることを約束している。本大会を通じて、アジアにおけるコンサルティング・エンジニアの連携、国際会議での個人と個人の繋がりの重要性を痛感した。今後のASPACとしての活動を充実させるためにも、今回得られた貴重な繋がりを活用していきたい。

 
▲NESPAK主催の晩餐会にて
 
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